2022.03.04
すでに2022年1月1日から、新たな電子帳簿保存法が施行されています。
「現状、特に問題になっていないし大丈夫だろう」とか、よく知ってらっしゃる方も「2023年末まで伸びてるし、今対策を考えなくてもいいだろう」とか考えておられるかもしれません。
改めて改正電子帳簿保存法について復習し、今必要な事や活用できることを考えてみたいと思います。
まず、電子帳簿保存法に規定されている事項は3種類あります。
① 電子帳簿等保存(電子的に作成した帳簿・書類のデータのままでの保存)
② スキャナ保存(紙で受領・作成した書類の画像データでの保存)
③ 電子取引(電子的に受領した取引情報のデータでの保存)
の3種類です。
このうち、施行前の2021年に特に話題に取り上げられていたのが③の電子取引です。
というのも、①と②は主に要件の緩和でかつ、「やってもいい」という強制力のない内容の改正でしたが、③については要件こそ緩和されているものの、内容的に「電子データでの保存が必要」となる強制力のある改正であり、対応のための準備が必要なものだったからです。
ただし、この強制力のある「電子データでの保存」についても、施行直前に「2023年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データをプリントアウトして保存することで差し支えない」こととなったため、冒頭に書いたように、当面は対策が必要ない状態にはなっています。
そのため、結果としては、これまで紙で保存していたものがより簡単に電子データで保存可能になったものの、紙での保存もOKという①及び②の改正と、電子データでの保存が義務付けられたものの、2023年12月31日までは紙での保存も可能という③の改正の内容で2022年1月1日からスタートしています。従来から紙での保存のみを行っていた方々も、当面は従来通り紙のみでの保存を継続できる状態にはなっているのです。
つまり、『何も変えなくても問題ない』状態にはなっています。これが冒頭の「現状、特に問題になってないし大丈夫だろう」とうい考えの正体であろうと思われます。
それでは、本当に今『何も変えなくても問題ない』のでしょうか?
答えはNo!です。
そもそも、対応が強制される③の電子取引の取引情報の電子的保存も、2024年1月1日以降は対応が必要です。もう一回延長されるのでは、と期待するのは楽観的過ぎるでしょう。
時間はあと2年近くもある、と考えられるかもしれませんが、対象は大手企業等とのEDIでの取引やECサイトでの買い物等が含まれ、今後も対象取引が増加する可能性が高いものです。電子取引を一切なくせば対応の必要性はなくなりますが、実際は現実的ではないでしょう。そのため、ほぼ全ての方が、電子取引の取引情報(領収書等)を税務署に信頼してもらえる電磁的記録として保管することが必要となります。自社で大掛かりなシステムを保有しない限り、保存要件を満たした保存ができる業者やシステムを選定する必要があることになります。なおかつ、保存期間は税務上の保存期間にわたるため、7年前までのデータを常に閲覧できる必要があるため、簡単に業者やシステムを乗り換えることが難しい可能性もあります。対応期限ギリギリの2023年12月31日直前になって慌ててシステムの検討・契約をするのは非常に危険な可能性があるのです。
また、そもそもこの電子帳簿保存法の改正は、「経理の電子化による生産性の向上」を後押しするためのものです。せっかく電子化を進めて生産性を向上させようとしても、税務上の書類は紙で保存する必要があった、もしくは電子的に保存するための手続きが煩雑であったため、企業活動の効率化を妨げていた面を取り払おうとするものです。そのため、生産性を高めたい、より平たく言えばもっと儲けたい、競争力を高めたいと思うのであれば、この機会に電子化できる業務等を洗い出し、効率化を図ることが必要だということになります。新しいシステムを導入したり、業務の手順を変えることは、当初は非効率が発生したり、現場の反対もあるかもしれません。しかし、これらにいち早く取り掛かることが、将来的には自身の事業が力を付けることの近道になると思います。
今ではほとんどの人がスマホを使っています。ただし使いこなしている人となると、より早くからスマホを使い始めた人だと思います。使い始める前は敬遠していても、使い始めると便利さに気づき、手放せなくなる性質を電子化は持っています。このメリットをより早く、より大きく手に入れるためにも、今回の電子帳簿保存法の改正に合わせて、今からでも強制部分だけでなく認容部分についても積極的に対応を進めるべきだと考えています。
少し長くなってきたので、今回はここまでにさせていただき、次回は上記の内容を踏まえて、改正の内容を解説したいと思います。
当事務所では、電子帳簿保存法への対応を後ろ向きな制度対応ではなく、未来志向の業務改善のチャンスと捉えて事業者の方々とお話をしています。少しでも関心のある方、疑問や不安を抱えておられる方は是非一度ご相談ください。